約9千の介護型療養病床、医療型などに転換

 11, 2008 12:00
約9千の介護型療養病床、医療型などに転換

2006年から08年4月にかけて国内の介護型療養病床が約9000床減っており、多くが医療型療養病床か一般病床に転換していることが、自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」の飯島夕雁衆院議員が実施した都道府県に対する全国調査で分かった。12年度末時点での医療型療養病床や介護老人保健施設(老健)の病床数について、数値での回答があったのは15県にとどまり、担当者からは療養病床削減による高齢者の受け入れ先確保を懸念する声が上がるなど、多くの自治体が地域の医療提供体制についての見通しを立てられずにいる状況がうかがえる。

国は12年度末までに、国内に約37万床ある療養病床を削減(介護型は全廃)する方針を打ち出しており、療養病床には老健などへの転換を勧めている。

 全国調査は今年4月下旬から5月上旬にかけて、都道府県の担当者に療養病床数や療養病床再編の現状、今後の見通しなどを聞いた。回答があった介護型療養病床の合計は、10万8002床(宮崎のみ「約」で回答)だった。

06年から今年4月にかけての療養病床の転換について、転換数を回答したのは25道府県で、計8929床の療養病床が転換または廃止となっていた。転換先については自由記述だったため、回答内容にばらつきがあったが、このうち10道府県が主な転換先を「医療療養病床」、13県が「医療型療養病床か一般病床」などと答えていた。転換数を答えていない県も含めると、27の道府県が転換先を「医療療養病床」(一般病床と併記も含む)としており、他には「障害者施設等入院基本料」や「特殊疾患病棟入院料」を算定する病床や、精神病床への転換などが挙がった。
 介護保険適用の施設に転換したと回答していたのは、福井(12床、グループホームへ)と静岡(10床、有料老人ホームへ)のみだった。廃止病床数を答えていたのは、山形(16床)、福井(24床)、奈良(48床)、鳥取(6床)だった。

 12年度末までの医療療養病床の増減数と老健の病床の増減数を回答していたのは15県で、青森、秋田、栃木、千葉、新潟、山梨、福井、鳥取、島根、広島、徳島、愛媛、高知、長崎、沖縄だった。

■半数の自治体で再編見通し立たず

 12年度末までの医療療養病床の増減数を答えていたのは24道県で、約半数の自治体で今後の療養病床再編についての見通しが立っていない状況がうかがえる。医療療養病床は回答があった道県の合計で、1万2154床の減少だった。数値を答えていない都府県は「調査中」「不明」「介護療養からの転換により増が見込まれる」などとしていた。担当者の所感では、「来年4月の介護報酬改定や、他の医療機関などの動向を見守るような状況」「転換先が固まっていない状況にあると思われる」「現段階で転換意向を判断することは困難」などの回答があり、医療機関が転換先を決めかねているために、担当者側でも先行きが見えない状態だ。
 24道県中、増床していたのは、秋田(207床)、千葉(985床)、新潟(383床)、愛知(530床)だった。

 12年度末までの老健の病床数の増減を答えていたのは13県で、計1万6056床の増床だった。

■「国民への周知、ほとんどない」

 病床再編についての厚生労働省への意見では、「(介護療養型老健への転換)支援策が何度も追加で出てくることは、財政面から導かれた『数字ありき』の感が否めない。何度も医療機関側に説明すると、情報が錯綜(さくそう)するため、迅速で確実な情報提供、政策をお願いしたい」「転換に伴い、住民負担や地方自治体における財政負担が増大しないよう、財政支援措置を講じてほしい」「受け皿がないまま病床の廃止や転換が進められ、行き場のない高齢者が出てくる可能性がある。国民への周知もほとんどないままで、あまりに制度改正が急過ぎる」「老健は理学療法士や作業療法士の配置が義務付けられており、小規模な医療機関が転換することは困難」などの意見があった。

■「何が足りないか分からないから『不明』」

 飯島議員は先ごろ開いた「国会議員の会」の会合で、「医療と介護の両方が受けられる『介護型』がなくなった後の受け皿の姿が見えず、何が足りないのか(都道府県は)答えが出せない。だから『不明』という回答がたくさん上がっていることを厚労省は理解してほしい」と話した。「介護療養型医療施設の存続を求める会」の上川病院の吉岡充理事長も、「介護も医療も、必要な人が入る施設をなくすという形でアンケートを取るのだから、答えようがない。結局『医療型』にするという答えしか出てこない」と述べた。

■国の想定外の状況が明らかに

 国は医療費抑制を目的に、国内に約37万床ある療養病床を12年度末までに約15万床にまで削減する方針を打ち出していた。このうち介護型を全廃し、医療療養病床を約10万床削減するとしていた。国は療養病床の転換を進めるために、今年5月に介護療養型老健を創設。厚労省の担当者は「看板を付け替えるだけ」と説明し、設備に関する基準などを緩和する転換促進策を打ち出して、医療機関に療養病床の転換を勧めている。

 しかし、介護型療養病床が介護療養型老健に転換した場合は、基本施設サービス費が約8割の減収になり、利益率も下がるなど、経営が厳しくなると指摘されている。このため、介護療養型老健への転換を敬遠して、介護型は医療型に、医療型は一般病床などに転換している現状が今回の調査でも浮き彫りになった形だ。

 医療費適正化については、国が都道府県に対し、昨年度末までに地域ケア体制整備構想の中で療養病床の転換推進計画を策定し、それを基に医療費適正化計画を立てることを求めていた。国はそれを受け、今年度中に具体的な数値を盛り込んだ全国医療費適正化計画を策定する。病床の再編に係る数値についても、病床の転換が国の想定通りに進んでいない現状があるため、都道府県が出す数値を取りまとめた上で、改めて出すとしている。


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参照: キャリアブレイン

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